簿記検定試験と言うと、最も知名度があるのは「日商簿記検定」です。
しかし、簿記検定には、日商簿記、全経簿記、全商簿記など、いくつかの種類があります。
それぞれどのような特徴がありどこが違うのか、またそれぞれの試験の難易度についてもまとめています。
実施主体
まず、日商・全経・全商のそれぞれの試験ごとに、実施主体(主催者)が異なります。
日商簿記 | 日本商工会議所および各地商工会議所 |
全経簿記 | 公益社団法人 全国経理教育協会 |
全商簿記 | 公益財団法人 全国商業高等学校協会 |
実施主体が異なることにより、受験者層にもそれぞれ特徴があります。
主催者を見て最も分かりやすいのは「全商簿記」で、全国商業高等学校協会が主体となっている通り、高校で使用している教材をベースに学習の成果を測る試験、と位置付けられています。主に商業高校に通う高校生が受験します。
「日商簿記」と「全経簿記」は社会人から学生まで広く受験する試験です。経理実務に直結する内容であることから、就職や転職に有利な資格として認知されています。
試験日程
次に試験日程です。
どの試験も年に複数回実施されていますが、日程は試験によってバラバラです。
なお、難易度の高い級ほど、年間の試験開催回数が少ない傾向にあります。
日商簿記 | ・1級は年2回(6月、11月) ・2級、3級は年3回(6月、11月、2月) |
全経簿記 | ・上級は年2回(7月、2月) ・上級以外(1級、2級、3級、基礎)は年4回(5月、7月、11月、2月) |
全商簿記 | ・年2回(6月、1月) |
受験者数
受験者数は次のようになっており、日商簿記が最も受験者数が多く人気の検定試験となっていることが分かります。
日商簿記 | ・1級:7,501人 ・2級:38,352人 ・3級:79,421人 (第149回 平成30年6月10日実施の受験者データより) |
全経簿記 | ・上級:1,935人 ・1級(商会):640人 ・1級(原工):595人 ・2級(商) :1,816人 ・2級(工) :582人 ・3級:5,989人 ・基礎:992人 (第191回 平成30年7月8日実施の受験者データより) |
全商簿記 | ・1級(会計):34,251人 ・1級(原計):31,443人 ・2級:48,838人 ・3級:38,133人 (第85回 平成30年1月28日実施の受験者データより) |
全経簿記は、受験者数だけ見ると非常に少なく、3つの試験の中ではかなりマイナーな試験です。
試験の難易度
試験の難易度についても違いがあります。
全商簿記
まず、高校生が受験者の大半を占める全商簿記については、学校での勉強の理解度を測る試験であるため、日商・全経とは試験の趣旨が異なるため、これらと難易度を比較することはあまり意味がありません。
試験問題も、基本的には教科書に沿った内容が出題されるため、よく「受からせるための試験」と言われます。
高校で簿記の授業があり、高卒で就職することを考えているような場合は、高校在学中に合格しておくことで一定の簿記の知識を得ていることをアピールできるでしょう。
全経簿記・日商簿記
一方、よく比較されるのが、全経簿記と日商簿記です。
全経簿記と日商簿記はどちらも合格者数を一定程度に絞ることで合格者のレベルを保ち、簿記の知識を習得していることを対外的に証明する意味合いがあります。
そのため、試験問題も基礎をしっかり理解しているかが問われると同時に応用力も試される問題となっています。
上の級にいくほど、丸暗記では対応できない問題が出題されるため、普段からきちんと理解することを心がけて学習を進める必要があります。
なお、就職や転職で特に有利となるのは、日商簿記2級以上という認識が一般的です。3級まで合格したら、ぜひ2級まで頑張って目指してみましょう。3級で辞めてしまうのは非常にもったいないです。
最近では、日商簿記2級の出題範囲が大幅に改定されており、難易度が上がってきています。ただ、だからこそ、2級の価値が上がっているとも言えます。
日商簿記2級の改定内容についてはこちらの記事で解説しています。
それでは、日商簿記と全経簿記の試験の難易度はどのような関係になっているのでしょうか。
日商簿記と全経簿記は、一般的に次のような対応関係にあるとされています。
- 日商1級 = 全経上級
- 日商1級と2級の中間 = 全経1級
- 日商2級 = 全経1級と2級の中間
- 日商3級 = 全経3級
- 日商初級 = 全経基礎
日商簿記と全経簿記は、若干出題傾向や形式が異なるため、難易度を1対1で対応させて表現するのは難しいのですが、おおむね上記のような認識が一般的となっています。
日商簿記と全経簿記のどっちを受けるべきか
日商簿記と全経簿記は、出題される論点の範囲はそれほど異ならないため、同じ勉強で両方の試験を受けることも可能です。
しかし、受験者数を見てわかる通り、日商簿記のほうが圧倒的に受験者数が多く、知名度もあります。
社会人で経理実務に携わっている人の中でも、「簿記=日商簿記」を思い浮かべる人が多く、全経簿記についてよく知らないという人も多いのが現実です。
これから簿記を受けようという場合は、特にこだわりがない限り、日商簿記を選ぶのがよいでしょう。