福利厚生費とは、会社が従業員のために支出する福利厚生を目的とした支出です。
具体的には、新年会や忘年会などの社内イベントや、慶弔見舞金、健康診断の受診費用、残業時の食事代などが典型例です。ほかにも、レクリエーションの一環として運動会を開催したり、社員旅行を実施している会社もあるでしょう。
福利厚生費を損金に算入するためには、注意しなければならない点があります。
福利厚生費の損金算入要件
福利厚生費は、原則として、その支出した額の全額が損金の額に算入されます。
交際費のように、損金に算入できる金額に限度が設けられているわけではありません。
そのため、福利厚生を充実させることは、従業員にとってメリットがあるだけでなく、会社にとっても節税の手段として有効であると言えます。
ただし、どのような内容の費用であっても無条件に福利厚生費として損金に算入できるわけではなく、節税の手段として用いるためには、次の要件を満たしていることが必要です。
- 全従業員を対象とした支出であること
- 支出した費用の金額が、常識的に妥当な金額であること
- 従業員に直接、現金で支出していないこと
全従業員を対象とした支出であること
まず、会社の全従業員を対象とした支出であることが求められます。
つまり、社内の一部の従業員のみを対象にして支出するものは、税務上は無条件に福利厚生費として計上することはできず、給与と判定されてしまうということです。
例えば、人間ドックの費用を会社が負担する場合、特定の役員だけを対象に費用負担するような検診プランでは給与と認定されてしまいますが、全従業員に一律に受診させることとしており、実際に受診した者の全員の費用を会社が負担したケースでは、福利厚生費として計上して問題ありません。
また、社員旅行も同様で、役員だけで旅行に行ったようなケースでは給与課税しなければなりませんが、職場の50%以上の人が参加し、かつ、旅行の期間が4泊5日以内である場合には、給与にはならないという取り扱いが認められています。
支出した費用の金額が、常識的に妥当な金額であること
次に、福利厚生費として支出した金額が、常識的に見て妥当な金額であることが必要です。
そのため、あまりにも高額な費用がかかった場合には、一般的に福利厚生費として認められないことが多いでしょう。
なお、明確にいくらからが高額か、という基準は存在しませんので、社会一般に同様の福利厚生を提供した場合と同等の金額の水準を見きわめることが必要です。
慶弔見舞金を支出しようとする場合には、事前に、社会通念上、一般的と考えられる額を見積もり、その水準で社内規程を作成し、該当した従業員に平等に支出される体制を整えておくのが望ましいと考えられます。
従業員に直接、現金で支出していないこと
福利厚生費は、あくまで会社が費用を支払うことが前提となっています。
そのため、例えば、従業員が支払った費用のうちの一部を後日現金で渡す、というようなケースは福利厚生費としては認められず、給与として取り扱われる可能性が高くなります。
福利厚生費のうち「食事代」を会社が負担する場合
会社が従業員の食事代を負担するケースもあります。地方の工場などで地元の給食業者から仕出し弁当を搬入してもらっているケースなど、よく見かける光景です。
これも、福利厚生の一環ですので経費に計上して問題ないように思われますが、税務的には少し厳格な要件が定められています。
その要件が、次の2点です。二つとも満たしていることが必要です。
- 従業員が、食事代の半分以上を負担していること
- 1ヵ月あたりの食事代が、3,500円以下であること
従業員が、食事代の半分以上を負担していること
1点目は、食事代の半分以上を従業員が負担していること、です。
食事の提供方法として、弁当業者などへ注文して従業員へ提供する場合と、社食で食事を作って提供するケースが想定されており、どちらもかかった費用の額の半分以上を従業員から徴収していることが求められます。
また、現金で食事代を補助することは税務上は福利厚生費として認められず、補助した全額が給与課税と判定されます。
ただし、深夜勤務で食事そのものの提供ができないために現金で補助を行うケースでは、1食当たり300円以下であれば給与として課税されない、という例外はあります。
さらに、残業時や宿日直時に支給する食事は、無料で提供しても給与判定されないこととなっています。
1ヵ月当たりの食事代が、3,500円以下であること
2点目は、会社の計上する費用が、1ヵ月当たり3,500円以下であること、です。
つまり、食事代の総額から従業員が負担した額を差し引いた金額が、1ヵ月当たり3,500円以下に収まっているかどうかに注意する必要があります。
なお、3,500円という金額は、税抜きの額で判断して問題ありません。
食事代の考え方のまとめ
ここまでをまとめると、会社が負担する食事代を福利厚生費として経費計上して問題ないかどうかは、次のように考えることができます。
まず、残業や宿日直時の食事かどうかを判定し、そうであれば全額が福利厚生費として経費計上することが可能です。もちろん、あまりにも高級な弁当などは認められず、社会一般に見て常識的な金額であることが必要です。
次に、残業・宿日直ではなく、その従業員の通常の勤務時間内に支給する食事については、前述した二つの要件(従業員が半額以上負担、月3,500円以下)に照らして判断することになります。この要件を両方とも満たしていれば、福利厚生費として経費計上が可能です。
要件を満たしていなければ給与課税
上記の二つの要件を満たしていない場合、福利厚生費として計上することはできず、税務的には給与として課税されることになります。
給与と言うと、普通は金銭で支給するものというイメージが強いですが、現物で支給する場合も従業員に対する経済的利益の供与という意味では同様であることから、税務上は現物であっても給与認定されることがあります。
なお、給与と判定されてしまうと、源泉徴収を行わなければならないなど、別の事務手続きが増えてしまいます。税務調査で指摘されると、対応に手間のかかる項目のひとつです。
福利厚生費の損金算入要件のまとめ
福利厚生費は、従業員と会社の双方にとってメリットのあるものですので、有効に利用したい制度です。
ただし、税務上、損金に算入するためには要件が定められていることと、食事代についてはさらに厳格な基準が設けられていることに注意する必要があります。特に、福利厚生費だと思っていた費用が、後々給与認定されることのないよう、体制を構築しておくことが重要です。