棚卸減耗損の会計処理と損益計算書の表示区分【原価性の有無を検討】

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棚卸減耗損とは?

棚卸減耗損とは、商品や製品などの棚卸資産について、継続的に受け払いを帳簿付けしている場合の「帳簿上の数量」と「実際の数量」の差を言います。

特に、棚卸減耗「損」という名前からわかる通り、帳簿上の数量に比べて実際の数量が不足している場合に用いられる言葉です。

棚卸減耗損という名称ではなく、棚卸減耗「費」という勘定科目を用いる場合がありますが、どちらも本質的な意味に違いはありません。

棚卸減耗損が発生する原因

棚卸減耗損の発生原因はさまざまですが、典型例としては、紛失や盗難です。

つまり、データ上ではきちんと在庫の受け入れと払い出しを管理していたとしても、実際の現場では不注意等のために紛失してしまったり、商品の管理体制に不備があり、意図せず盗難にあってしまうケースなどです。

その他にも、蒸発しやすい液体などを製造する会社の場合、製造過程や輸送中に一定量は蒸発してなくなってしまうこともあります。

また、腐りやすい商品を扱っている場合、保管中に一定数は腐って売り物にならなくなってしまうことも考えられます。

これらが棚卸減耗損の発生する原因です。

具体的な計算例

棚卸減耗損が発生するケースとして、次のような状況が考えられます。

 商品の仕入れ・販売を行っている会社の場合

  • 期首の在庫数量は、100個であった。
  • 当期に仕入れた商品は、250個。
  • 当期に売り上げた商品は、300個。
  • 期末日に実際の在庫を数えてみたら、40個だった。

上記の例では、継続記録法によって棚卸資産の残高を管理している場合、期末日の帳簿上の在庫数量は、50個となります。

期首100個 + 仕入250個 - 売上300個 = 50個(帳簿上の個数)

つまり、データ上(理論上)は、期末日に50個の在庫があるはず、ということになります。

ところが、実際に期末日になって在庫を数えてみたら、40個しかなかった、という状況ですので、帳簿上の数量と実際の数量の差(50個-40個=10個)が棚卸減耗損ということになります。

棚卸減耗損の会計処理

棚卸資産

棚卸減耗損が発生した場合には、帳簿上の残高を切り下げる必要があります。

実際に数量を数えた結果、帳簿上の数量よりも少なくなっていることから、実際の数量に合わせる必要があるためです。

会計処理は、次のように仕訳を行います。

借方 金額 貸方 金額
棚卸減耗損(PL) ××× 棚卸資産(BS) ×××

棚卸減耗損の損益計算書での表示区分

棚卸減耗損の損益計算書上の表示区分には、いくつかパターンがあります。

まとめると下の表のようになりますが、ポイントは、原価性があるかどうか、です。

パターン 損益計算書の表示区分
原価性のある原材料の場合 製造原価
原価性のある商品・製品の場合 売上原価(または販売費)
原価性がない場合 特別損失(金額が小さければ営業外費用)

原価性がある場合と原価性がない場合

原価性があるかどうかについては、以下の観点で総合的に検討します。

原価性がある 毎期継続してある程度の数量は減耗が生じるのが通常で、その範囲内で発生した数量不足。売上を獲得するためには、ある意味、不可避的な費用と言えるもの。
原価性がない 通常の事業活動をしている中では発生しないような臨時的・異常な原因で生じた数量不足。これまでには例のない特殊な事情で発生したような減耗で、損失金額が多額になることも多い。

棚卸減耗損に原価性があると判断できる場合は、売上を上げるためにはどうしても必要な費用(売上との対応関係が明確なコスト)と考えられるため、売上原価に計上します。

一方で、原価性がない異常な原因で発生した棚卸減耗損は、もはや売上との対応関係が見い出せない損失(売上に貢献していない損失)ですので、売上原価に含めるのは適切ではなく、金額の大小に応じて特別損失または営業外費用に計上します。

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