消費税の計算方法には、原則的な方法のほかに、小規模な事業者の事務負担に配慮するための簡易課税制度が設けられています。
簡易課税を選択する場合、6種類に分類された事業区分のどれに該当するかの判定を行う必要があります。
簡易課税における事業区分
簡易課税の事業区分は、次の6区分に分類されています。それぞれの事業区分ごとに、異なるみなし仕入率が定められており、仕入控除税額の計算に、このみなし仕入率を使用することができます。
- 第一種事業(卸売業)90%
- 第二種事業(小売業、農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業))80%
- 第三種事業(製造業等、農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く))70%
- 第四種事業(その他の事業)60%
- 第五種事業(サービス業等)50%
- 第六種事業(不動産業)40%
第一種事業とは
第一種事業は、卸売業です。国税庁のホームページには、「他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで他の事業者に対して販売する事業」と記載されています。
他者から購入した商品に、商標(ロゴ等)やネームを貼り付けまたは表示する場合は、第一種事業に該当します。
第二種事業とは
第二種事業には、小売業が含まれます。これは「他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで販売する事業で第一種事業以外のもの」とされています。つまり、消費者に対して商品を販売するケースが該当します。
第三種事業とは
第三種事業に含まれる事業には、具体的に下記のものがあります。
- 農業
- 林業
- 漁業
- 鉱業
- 建設業
- 製造業(製造小売業を含む)
- 電気業
- ガス業
- 熱供給業
- 水道業
建設業者の元請けが、自分で工事を行わず、すべて下請けに外注する場合であっても、その元請けの事業は第三種事業です。
書籍の発行、出版事業も第三種事業です。
一方、製造業等を営んでいたとしても「加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供」は第三種事業からは除かれることとされています。いわゆる下請け業などは、第四種事業となります。
第四種事業とは
第四種事業は、第一種事業、第二種事業、第三種事業、第五種事業及び第六種事業に当てはまらない事業です。最も典型的な業種は、飲食店業です。
紛らわしいものとして、ファーストフード店等での持ち帰り用の販売は、製造して販売する場合は第三種事業、仕入れた商品を販売する場合は第二種事業になります。
また、飲食するための設備を有しない宅配ピザ店・仕出専門店が行うピザの宅配・仕出料理の宅配は、製造小売業となるため、第三種事業です。これに対し、飲食のための施設を設けている飲食店等が行う仕出しや出前は、第四種事業に該当します。
なお、上記が第四種事業の典型例である飲食店に関するものですが、これ以外に、事業用固定資産の譲渡(売却等)も第四種事業に分類されています。
第五種事業とは
第五種事業はサービス業等とされていますが、具体的には下記のものが該当します。
- 運輸通信業
- 金融業
- 保険業
- サービス業(飲食店業を除く)
「サービス業(飲食店業を除く)」に含まれるものとしては、例えば近年増えているものとして、情報通信業(インターネット附随サービス業やソフトウェア業、情報処理・提供サービス業など)があります。
また、運輸業、郵便業、学術研究、専門・技術サービス業、宿泊業、教育関連など、多岐にわたります。
旅館やホテルなども基本的には第五種事業ですが、売店での売上は第二種事業であったり、宿泊料金と区分してある客室冷蔵庫の飲物等の売上は第四種事業になるなど、細かく規定されています。
プロのスポーツ選手は、サービス業等に該当しないように思われるものの、娯楽業に準ずるものとの考え方により、第五種事業とされています。
第六種事業とは
第六種事業は、不動産業です。
ただし、不動産にかかわる事業であっても、「他者から購入したものを品質又は形状を変更しないで他の者に販売する事業」に該当すれば、第一種事業または第二種事業になります。
簡易課税における事業区分のまとめ
消費税の計算において簡易課税を選択する場合、事業区分によって異なる税額が計算されることから、営んでいる事業がどの区分に分類されるのかを正確に判定することが重要です。
国税庁のサイトの下記のページにも、詳細が掲載されています。