年末調整の流れを解説【令和2年(2020年)の改正事項対応】

この記事では、ほとんどの給与所得者に関係のある「年末調整」の流れについて解説しています。令和2年(2020年)からの改正事項も反映しています。

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年末調整とは

年末調整の流れ

年末調整とは、1年間の所得税の合計額と、毎月の給料から源泉徴収された所得税の合計額との差額を精算する手続きのことです。

年末調整は、サラリーマンであれば勤め先の会社が行うことになっています。

また、年末調整の対象となるのは給与所得者のみです。

なお、給与所得者であっても自営業であっても「所得税を納める」という意味では同じであるため、本来は全員が確定申告をするのが最も本来の姿と言えます。ただ、サラリーマン全員が確定申告をするのは現実的ではなく、それを省くための制度として、年末調整という制度が設けられています。

年末調整はなんのために必要か

年末調整は、毎年11月くらいから12月にかけて、会社の人事部などから指示を受けて書類の準備をするのが一般的です。「忙しい時期に面倒くさい」という声もよく聞かれます。

では、なんのために年末調整が必要なのでしょうか。

年末調整では、毎月の給料から源泉徴収という形で天引きされていた所得税の1年間の合計額と、本来の年間の所得税額の差額を調整します。そして、この両者は普通一致しません。

これは、毎月の源泉徴収は「源泉徴収税額表」という概算の表に当てはめた税額をベースに、仮で徴収しているからです。

源泉徴収税額表は、国税庁のホームページで毎年その年のものが公表されています。

源泉徴収税額表には、扶養の人数によって当てはめる税額が書かれていますが、実際には1年の途中で扶養の人数が変わることもあります。

ところが、毎月の給料から源泉徴収を行う場合には、年間の途中で変更になった扶養の人数を考慮することがないため、最終的に1年間が終わった時に計算する所得税の合計額とは一致しなくなります。

このほかにもいくつかの要因で源泉徴収をした所得税と本当に納付すべき所得税額には差額が発生してしまうため、その差額を年末に精算する手続きが必要となります。

年末調整によって所得税の確定額を計算した結果、毎月の天引き額の合計よりも多くの納税が必要となった場合は、追加で不足額を徴収されます。一方、毎月の給料から天引きされていた額の方が多額となった場合には、所得税が還付されることになります。

「12月分の手取りがいつもと違う」と感じることが多いと思いますが、それは上記のように、12月分の給料の支給のタイミングで差額を調整しているからです。

年末調整の対象者

年末調整の対象者

年末調整の対象となるのは給与所得者のみですが、では、給与所得者であれば全ての人が年末調整の対象になるかと言うと、そういう訳ではありません。

まず、年末調整の対象になる人は、原則として、1年間の給与収入が2,000万円以下で、かつ、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している人です。

一方、年末調整の対象にならない人は、年間の給与収入が2,000万円を超えている人、給与所得者の扶養控除等申告書を会社に提出していない人、年の途中で退職した人、災害によって被害を受け災害減免法の適用を受ける人などです。

年末調整で控除できるもの

所得税は、その税額を計算する過程で、所得控除税額控除などの様々な控除額を考慮して計算する必要があります。

このような控除の中には、年末調整で対応できる控除と、年末調整では対応できない控除があります。

年末調整で控除できるもの

いくつかの種類がある所得控除・税額控除のうち、年末調整で対応できる控除は次の通りです。

  • 基礎控除
  • 配偶者控除
  • 配偶者特別控除
  • 扶養控除
  • 障害者控除
  • 寡婦控除
  • ひとり親控除
  • 勤労学生控除
  • 所得金額調整控除
  • 社会保険料控除
  • 小規模企業共済等掛金控除
  • 生命保険料控除
  • 地震保険料控除
  • 住宅ローン税額控除の2年目以降

年末調整で控除できないもの

一方、年末調整では対応できない控除としては次のものがあります。

  • 雑損控除
  • 医療費控除
  • 寄附金控除
  • 住宅ローン税額控除の初年度
  • 特定支出控除

これらの年末調整で対応できない控除については、確定申告をして調整をするしかありません。

そのため、これらの控除を受ける場合には、会社で一旦年末調整をしてもらい、年末調整終了後の源泉徴収票をもとに確定申告書を作成することになります。

年末調整の流れ

年末調整の流れは以下のとおりで、このステップに沿って進めていきます。

従業員から書類の提出を受ける

1年間に支払った給与・賞与の総額を集計・計算する

給与所得控除額を差し引く

所得控除を差し引く

税率を乗じて所得税額を計算する

税額控除があれば差し引く

それぞれのステップを具体的に見ていきます。

従業員から書類の提出を受ける

まずは、従業員から下記の書類の提出を受けます。

  • 扶養控除等(異動)申告書
  • 基礎控除申告書
  • 配偶者控除等申告書
  • 所得金額調整控除申告書
  • 保険料控除申告書
  • (特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書

「扶養控除等異動申告書」は、扶養控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除を計算するために必要な書類です。

「基礎控除申告書」は、48万円が限度の基礎控除の適用を受けるために必要な書類で、令和2年分の計算から控除額についての改正が行われたことに伴って必要となった書類です。

「配偶者控除等申告書」は、配偶者控除と配偶者特別控除の計算に用います。

「所得金額調整控除申告書」は、令和2年分から新しく創設された所得金額調整控除の適用を受ける場合に必要な書類です。年収850万円を超える人が対象ですので、それ以下の年収の人には関係ありません。

「保険料控除申告書」は、生命保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除を把握するために使用します。

「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」は、いわゆる住宅ローン控除のために使用されます。

従業員に対しては、いつまでに提出する必要があるかを明確に伝え、期限までに確実に提出してもらうようにしましょう。

1年間に支払った給与・賞与の総額を集計・計算する

次に、1年間に従業員に支払った給料と賞与(ボーナス)の総額を集計し計算します。

なお、今年中に支給日が到来して支払いが確定している給料がある場合、仮にそれが未払いの状態であっても、今年の年末調整に含めなければなりません。

まだ実際に支払っていないから、という理由で集計に含めないのは誤りですので、注意が必要です。

給与所得控除額を差し引く

1年間に支払った給料・賞与の額が集計できたら、そこから給与所得控除額を差し引きます。

その際、給与等の収入金額が660万円未満の場合には、「所得税法別表第五(年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表)」というものが公表されていますので、この表に当てはめて給与所得控除後の金額を計算することができます。

令和2年分からは、新しく所得金額調整控除が創設されています。所得金額調整控除の適用を受ける人がいる場合は、ここでその控除を適用します。所得金額調整控除については以下の記事で詳しく解説しています。

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所得控除を差し引く

給与所得控除後の金額が計算できたら、その金額から所得控除を差し引きます。

所得控除額は、最初に従業員から提出してもらった書類(給与所得者の扶養控除等(異動)申告書、配偶者控除等申告書、保険料控除申告書、等)をもとに計算します。

所得控除を差し引いた後の額は、「課税給与所得金額」と呼ばれます。

税率を乗じて所得税額を計算する

所得控除を行った後の金額(課税給与所得金額)に対し、所得税の税率を乗じることで納税額を計算します。

ここで計算された額は、「算出所得税額」と呼ばれます。

税額控除があれば差し引く

算出所得税額が計算できたら、ここから税額控除を調整します。

税額控除の主なものは、住宅ローン控除です。

以上の計算まで完了したところで、ようやく年間の所得税額が確定します。

多くの企業では、12月の給与で源泉徴収額と確定額の差額を精算します。

所得税を預かっている会社側の手続きとしては、その預かった所得税の納付を行います。毎月納付する企業は1月10日まで、納期の特例の適用を受けている企業は1月20日までに納付します。

以上が年末調整の手続きの流れです。

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【参考】国税庁 年末調整の解説ページ

LINK 国税庁:年末調整がよくわかるページ

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