ROEは、株式投資を行う際に注目される指標のひとつです。
計算式は単純ですが、ROEは複数の要因により変動するため、どの要因によってROEが動いているかを正確に把握することがポイントとなります。
ROEとは
ROEとは、「Return On Equity」の略で、日本語では「株主資本利益率」と呼ばれます。
ROEは、株主から出資を受けたお金(Equity)をどれだけ効率的に使って利益(Return)を稼げているかを表す指標です。すなわち、ROEの高い企業は、自己資本を有効に活用して利益を稼いでいることを示しており、反対にROEが低い企業は効率的な経営ができていないことを示しています。
一般的に、市場では、ROEが8%を上回る水準が求められていると言われています。
ROEの基本的な計算式
ROEの計算式は次のとおりです。
ROE=純利益/自己資本
上記の計算式の通り、ROEは純利益を自己資本で割ることで計算できます。この計算式を見る限り計算は非常に単純ですが、単にROEが高いから良い、というわけではなく、計算式を分解して検討することが重要です。
ROEの計算式の分解
上記の計算式は、さらに下記のように分解することができます。
ROE=純利益/売上高 × 売上高/総資産 × 総資産/自己資本
①売上高純利益率
「純利益/売上高」は売上高純利益率であり、これは「稼ぐ力=収益性」を意味します。
売上高純利益率を改善するためには、現状の原価・費用の水準を保ったまま売上を増加させるか、売上高を維持したまま原価・費用を低減させる必要があります。
②総資産回転率
「売上高/総資産」は総資産回転率であり、日数や月数を単位として表現されます。この指標は、総資産が何回転したかを示すものであり、企業の効率性を表します。数値が高いほど資産が効率的に収益に結びついていることを示します。
総資産回転率を上昇させるためには、現状の投資の水準のまま売上高を増加させるか、売上高は現状を維持したまま遊休資産などの不要な資産を処分することで資産を圧縮する必要があります。
③財務レバレッジ
「総資産/自己資本」は財務レバレッジと呼ばれ、自己資本比率の逆数となっています。企業の安定性を示す指標で、単位は「倍」で表現されます。
財務レバレッジは、金融機関からの借入や社債の発行などによりレバレッジをきかせて負債を活用する程度を表します。そのため、借入などを増やせば財務レバレッジが上昇し、結果的にROEに対してプラスの作用を与える、という関係があります。また、自社株買いにより自己資本を減少させることでも財務レバレッジは上昇します。
ただし、当然、借入を増やしたり自己資本を減少させたりすれば貸借対照表に占める負債の割合が大きくなり、企業の安定性が損なわれるため、リスクが増大します。
健全なROEとは
ROEの計算式を分解すると「ROE=①売上高純利益率×②総資産回転率×③財務レバレッジ」となることから、健全なROEを見極めるためには、この3つの要素のうちどの指標が最終的にROEの数値に影響を与えているかを検討します。
つまり、株式投資を行う際には、投資する企業のROEそのものを見るのではなく、上記3つの要素に分解して検討することが重要です。
①売上高純利益率と②総資産回転率の上昇によりROEが押し上げられている場合は、基本的には、収益性・効率性が高いことを意味しているため、健全なROEと言えます。
一方、③財務レバレッジの上昇によりROEが高められている場合は、企業の財務的な安定性が損なわれている可能性があり、注意が必要と言えます。特に経営者がROEを重視しており、手法を問わずROEの上昇を計画している場合、安定性を損なってまで借入金や自社株買いを行う可能性が考えられます。