中小企業診断士とは?
中小企業診断士は、中小企業のさまざまな経営課題に対応するための診断や助言を行う経営コンサルタントで、国家資格を有する専門家です。
対象とする分野は、経営戦略、組織や人事に関わる課題、マーケティング戦略、生産管理、店舗運営、財務及び会計、法務、ITシステムなど、非常に多岐にわたります。
中小企業診断士はとても人気のある資格ですが、学生のうちから目指す人はそれほど多くなく、知名度もそれほど高くありません。
しかし、社会人になるとその認知度は高まり、特にビジネスの世界で働く人にはよく知られています。そのため、社会人になり働きながら資格取得を目指す人が多いのも特徴で、受験者の約6割は民間企業勤務で、約1割が金融機関勤務です。
中小企業診断士になるには?
中小企業診断士になるには、1次試験、2次試験(筆記、口述)、実務補習・実務従事の3段階のステップをクリアする必要があります。
第1次試験
第1次試験は、毎年8月上旬の2日間で実施されます。
試験科目は7科目で、マークシート形式です。
- 経済学・経済政策
- 財務・会計
- 企業経営理論
- 運営管理(オペレーション・マネジメント)
- 経営法務
- 経営情報システム
- 中小企業経営・中小企業政策
第1次試験の合格率は約20%です。
試験年度 | 受験者数(名) | 合格者数(名) | 合格率(%) |
平成30年度 | 13,773 | 3,236 | 23.5% |
平成29年度 | 14,343 | 3,106 | 21.7% |
平成28年度 | 13,605 | 2,404 | 17.7% |
平成27年度 | 13,186 | 3,426 | 26.0% |
平成26年度 | 13,805 | 3,207 | 23.2% |
平成25年度 | 14,252 | 3,094 | 21.7% |
平成24年度 | 14,981 | 3,519 | 23.5% |
第2次試験
第1次試験に合格後、筆記試験と口述試験からなる第2次試験に進みます。
筆記試験は10月、口述試験は12月に実施されます。
筆記試験は、中小企業の診断及び助言に関する実務の事例Ⅰ~Ⅳの4科目です。
- 事例Ⅰ:組織(人事を含む)を中心とした経営の戦略および管理に関する事例
- 事例Ⅱ:マーケティング・流通を中心とした経営の戦略および管理に関する事例
- 事例Ⅲ:生産・技術を中心とした経営の戦略および管理に関する事例
- 事例Ⅳ:財務・会計を中心とした経営の戦略および管理に関する事例
口述試験は、筆記試験の事例などをもとにランダムで出題され、個人ごとに約10分間の面接形式による試験です。
受験生(1名)に対し、3名の試験官が対峙する形で実施され、受験生は資料等を参照することはできませんので、内容をきちんと理解しているかが問われます。
第2次試験の合格率は約20%です。
試験年度 | 受験者数(名) | 合格者数(名) | 合格率(%) |
平成30年度 | 4,812 | 905 | 18.8% |
平成29年度 | 4,279 | 828 | 19.4% |
平成28年度 | 4,394 | 842 | 19.2% |
平成27年度 | 4,941 | 944 | 19.1% |
平成26年度 | 4,885 | 1,185 | 24.3% |
平成25年度 | 4,907 | 910 | 18.5% |
平成24年度 | 4,878 | 1,220 | 25.0% |
実務補習・実務従事
第2次試験に合格後、3年以内に実務補習を15日以上受講するか、または診断・助言実務に15日以上従事することにより、中小企業診断士としての登録を行うことが可能となります。
実務補習・実務従事のどちらでも構いませんが、多くの合格者は実務補習を選択します。
学習時間の目安は「1,000時間」
試験に合格するためには、一般的に1,000時間程度の学習が目安と言われています。
同じビジネス系の資格としては公認会計士がありますが、こちらは約3,600時間、税理士は約2,500時間と言われているため、これらの難関資格と比べるとかなり短い期間で合格を目指すことができます。
公認会計士試験は学生や無職の受験生が多く、勉強に専念できる環境で目指す人が多いため試験は熾烈を極めますし、税理士試験も科目合格制度を利用し、1科目ずつ何年もかけて最終合格までこぎつける人が多い特徴があり、非常に難しい試験です。
中小企業診断士試験はこれらに比べて明らかに難易度が下がり学習時間も短いですので、働きながら勉強することも現実的な資格です。
ただし、決して受かりやすい試験と言うわけではなく、どんなに短くても1年間はじっくりと取り組む必要はありますし、社会人の場合、仕事のスケジュールの都合もありますので、1年で合格することはかなり難しいと言えます。
なお、社会保険労務士試験の学習時間は約700時間、日商簿記検定1級は約800時間ですので、これらの試験よりはやや難しいと言えるでしょう。
おすすめの勉強法は?
いろいろな資格試験がある中で、学習に1,000時間近くを要する試験の場合、受験生の多くが専門学校に通います。
独学も不可能ではありませんが、短期間で合格を目指すならやはり専門学校に通うのが得策です。専門学校は費用がかかりますが、その分テキストはわかりやすく作りこまれていて、効率的に学習を進めることができます。
社会人の場合、ある程度短期間で合格を目指さないと、その間に転勤や昇進などで環境が大きく変わってしまうこともあるため、学習を継続することが難しい状況になることがあります。
なお、スクールが近くにない場合でも、通信講座を設けている場合が多いため、学習は可能です。最近ではWEB通信やDVDによる講座もあるため、通信講座でもデメリットはほとんど感じなくなっています。むしろ、空いた時間で効率的に学習できるうえ、移動時間などにも拘束されないためメリットのほうが多い場合もあります。
中小企業診断士は難関の国家資格ですので、合格すればそれなりの見返りのある資格です。合格までの期間を定め、ある程度の投資(スクール費用など)は必要だと考えて学習することが重要です。