昨今、企業の中には75歳を超えて働く従業員がいるケースを見受けることがあります。また、役員として75歳を超えて職務を担っている方もいます。高齢化社会の日本においては、ますます増えていくかもしれません。この記事では、75歳以上の役員・従業員について、社会保険の手続きのひとつである「算定基礎届」を提出する必要があるのか否かについて解説します。
75歳以上の保険制度について
役員や従業員について、会社は様々な社会保険の手続きを行う必要があります。そして、社会保険の手続きは、雇用する従業員の年齢によって各種の手続きが定められています。
特に、従業員が高齢の場合、厚生年金保険は70歳で、健康保険は75歳で保険料の徴収が終了します。つまり、75歳以上の従業員は会社の社会保険からは完全に脱退することになります。これは、75歳になると後期高齢者医療制度という別の制度へ加入するためです。会社から給料を支払っていても、給与計算を行う際に厚生年金保険料や健康保険料を控除することはありません。
では、75歳以上の従業員について、社会保険の「算定基礎届」を提出する必要があるのでしょうか?
75歳以上は算定基礎届を提出する必要があるか
75歳になると会社の社会保険から脱退するため、算定基礎届を提出する必要があるのかどうか疑問が生じますが、結論としては、提出する必要がある、ということになります。
まず、年金機構のホームページを確認すると、算定基礎届の提出対象者として以下のように記載されています。
算定基礎届の提出の対象となるのは、7月1日現在のすべての被保険者および70歳以上被用者です。
ただし、以下の(1)から(4)のいずれかに該当する方は、算定基礎届の提出が不要です。
(1)6月1日以降に資格取得した方
(2)6月30日以前に退職した方
(3)7月改定の月額変更届を提出する方
(4)8月または9月に随時改定が予定されている旨の申し出を行った方
引用:日本年金機構ホームページ 定時決定(算定基礎届)
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20121017.html
上記の通り、算定基礎届の提出対象者は、健康保険・厚生年金保険の被保険者および70歳以上被用者となっており、この「70歳以上被用者」という部分に75歳以上の役員・従業員が含まれます。75歳以上が除かれるような決まりにはなっていませんので、算定基礎届の提出対象という結論になります。
なぜ75歳以上でも算定基礎届の提出が必要なのか
75歳以上の従業員・役員は後期高齢者医療制度へ加入しているため、会社の社会保険には加入していません。では、なぜ会社から年金事務所へ算定基礎届を提出する必要があるのでしょうか。
それは、「年金額改定のため」です。
年金の受給開始年齢に達した人は、会社から給料をもらいながら同時に年金も受給することができます。これを在職老齢年金と言います。ただし、給料の金額によって一部(または全部)の年金が支給停止になる、という制度になっています。給料の額が大きいほど支給停止になる年金額も大きくなり、最大で全額が支給停止となるケースもあります。
支給停止の金額は、月の年金額と給料の額を合計して計算する仕組みとなっていることから、会社からいくらの給料を払っているかを国が把握する必要があります。そのため、会社から算定基礎届を提出する必要があるのです。