Jリートはリスクの把握が重要
リート(REIT)とは、投資者から集めた資金で不動産へ投資を行い、そこから得られた収益(賃料収入や物件の売買益など)を投資者に分配する商品です。不動産投資信託とも呼ばれるもので、REITは「Real Estate Investment Trust」の頭文字をとったものです。海外のリートと区別するため、Japanの「J」を付けてJリート(J-REIT)とも呼ばれています。
少額から不動産に投資できるため様々な商品に分散投資が可能なうえ、不動産の運用自体はプロが行うため分配金が高いことでも人気ですが、リスクを把握しておくことも重要です。
①元本割れのリスク
Jリートは不動産と株式のふたつの性質を併せ持った投資商品ですので、一般的な株式投資と同様、取引所に上場して取引されていることからその価格は変動し、元本は保証されません。
市場全体の景気の動向や不動産市況の影響を受けるため、対象としている物件自体に業績の変動がない場合でも、投資口の価値が変動してしまうことがあります。
②投資対象不動産が物理的に毀損するリスク
投資対象が不動産ですので、その不動産が災害等により毀損するリスクがあります。
地震や台風、火災などの自然災害や土壌汚染などの環境問題に加え、テロや暴動なども不動産の物理的な毀損を引き起こすことが考えられます。
また、物件の欠陥や有害物質の発見などもリスクとなります。
これらは通常予測することが困難ですので、常にこのようなリスクがあることを頭に入れておく必要があります。
③分配金が減るリスク
Jリートは、利益の90%超を分配することにより法人税の優遇措置を受けることができます。
この税制面での恩恵を受けるため、Jリートは分配金が高く設定されていることが多いですが、この分配金も保証されているものではありません。
対象としている不動産のテナントの入居・退去の状況や賃料の改訂の影響を受けるため、特に大口のテナントが退去するようなケースでは分配金が減ってしまうことがあります。
また、最近では不動産の取得競争が過熱しており、想定した内容で物件を取得できないことにより、期待される利回りを得られないケースがあります。
④価値の希薄化リスク
Jリートは増資によって資金を集めることがあります。借入ではなく、資本を増やすことを意味するため、財務の健全性の観点では良いことのように思えます。
しかし、増資をするということは、投資口(株主)が増えるということです。
株主が増えれば1口当たりの分配金(取り分)は減ってしまいます。これが希薄化(ダイリューション)のリスクです。
過去の事例を見てみると、増資のタイミングで新規に不動産を購入することで収益性を高く保とうとする例がありますが、実際には、1口当たりの分配金は減ってしまったケースが多いです。
⑤借入に伴うリスク
不動産を購入する場合、その資金を投資家からの出資でまかなう以外に、金融機関からの借入で調達します。
借入を行うことでレバレッジを利かせ投資効率を上げることが期待できますが、金利が上昇すればその分だけ銀行への利息の支払いが増えることになりますので、そのぶん分配金に回す利益が圧迫されることになります。
⑥制度変更のリスク
不動産は様々な法制度に規制されています。
税制や建築に関する規制など、法制度の変更によってJリートの価値は変動するおそれがあります。
⑦上場廃止のリスク
取引所が定める上場基準に抵触した場合は、上場廃止となることもあります。
上場廃止になれば、取引は著しく困難となります。実際、過去に上場廃止となったJリートがあります。
⑧倒産のリスク
Jリートは一般の法人と同様に、倒産するリスクがあります。
特に、ある特定の分野(例:商業施設)に特化して運用を行っている場合、その分野の市況が悪化することによりリスクが高まります。