独学で日商簿記検定1級の合格を目指すために必要なこと

スポンサーリンク
01 レクタングル (大)

日商簿記検定1級の難易度

簿記1級は、公認会計士や税理士を目指す人たちが受験する、とても難易度の高い試験です。

試験科目は、商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算の4科目あり、これは2級の科目数の倍です(2級は商業簿記・工業簿記の2科目のみ)。

合格ラインは70%以上の得点(100点満点中70点以上)ですが、4科目のうち1科目でも40%に満たない科目があると、たとえ合計で70%以上を獲得していても不合格となる「足きり」があります。
したがって、あまりにも不得意な科目をつくってしまうと合格が難しくなるため、まんべんなく学習を進める必要があります。

科目 試験時間 合格基準
商業簿記 90分 70%以上の得点

(ただし科目ごとに足切りあり)

会計学
工業簿記 90分
原価計算

合格率は約10%で推移しています。2級の合格率が約30%、3級の合格率が約40%であることと比較しても、かなり低い合格率です。
なお、2級・3級の試験は年に3回(6月、11月、2月)実施されますが、1級に関しては毎年6月と11月の年2回実施されることとなっており、2月の試験はありません。

合格率の推移は次のとおりです。

試験回 152回 150回 149回
試験日 R1.6.9 H30.11.18 H30.6.10
合格率 8.5% 9.0% 13.4%
試験回 147回 146回 144回 143回 141回
試験日 H29.11.19 H29.6.11 H28.11.20 H28.6.12 H27.11.15
合格率 5.9% 8.8% 9.3% 10.9% 9.6%

簿記3級、2級と順番に受験して合格した人がそのまま1級を目指すケースもありますが、学習の途中で2級と1級のレベルの差に愕然とし、受験を断念してしまう人も多いです。

最近では2級の出題範囲が改訂され、少しずつ1級と2級のレベルの差が縮まりつつありますが、それでも依然として2級と比べると難易度は急激に上がります。
1級から足切り制度が設けられている通り、どれかひとつの科目を捨てるというようなことも許されず、総合力が問われます。

学習をスタートするにあたり、まず始めに「1級の難易度は圧倒的に高い」ことを理解することが重要です。

簿記1級に独学で合格することは可能か?

簿記1級は非常に難易度が高いため、多くの受験生が予備校や専門学校に通います。

受験者層の中には多くの公認会計士試験受験生・税理士試験受験生が含まれています。
受験する母集団のレベルが高いため、合格率以上に難易度は高く感じます。

なお、公認会計士試験に合格した人の中でも簿記1級に落ちたという人もいるくらいですので、かなり厳しい試験であることがわかります。

そんな中でも、一定数の独学合格者がいることは事実です。

1級に合格するためには「理解」が大事

簿記1級は非常に難易度が高い問題が出題されるうえ、範囲も広いため、暗記のみで対応するのは困難です。

2級までであれば単に仕訳のパターンを暗記してしまえば合格すること自体は可能です。

しかし、1級では、2級までと同じ勉強法は通用せず、常に「なぜその仕訳を切るのか?」を考えながら問題を解くことが重要です。そうすることにより、多少ひねった形式で問題が出題されても、基礎的な理解に基づき、その場で考えて正解を導くことができます。

また、本番の試験では、問題の前提がやたら長々と書かれていたり、テキストに載っていないような方法で答えを導き出さなければならない問題が出題されることがあります。
このような問題では、いかに基本を理解しているかが重要となります。
すべての問題に正答できなくても、他の受験者が正答できる基礎的なレベルの問題は絶対に落とさないようにし、ひとつひとつ、点数を積み上げていけるかがポイントです。

仮に2級まで暗記を重視した勉強をしてきたという場合は、1級の勉強の過程でも、ときどき2級のテキストに戻って本質を理解することを心がけてください。

時間配分にも留意

時計

2級までであれば、それほど時間配分を意識しなくても時間が足りないという状態になることは少ないです。

一方、1級では問題・解答量ともに分量の多い問題が出題されるため、少しでも苦手な論点が出題されると時間内に解ききることが難しくなります。
そのため、解ける問題を確実に得点していき、深みにはまりそうな問題はある程度のところで見切りをつけるようにすることも重要です。

つまり、「捨てる」問題を見極める、ということです。

このためには、普段の勉強においても本番を意識したトレーニングを行っておく必要があります。
試験の本番だけやろうとしても、普通はできません。

勉強する際は過去問や予想問題集を使い、時間を測って解くようにし、自分がどのくらいのスピードで回答できているのかを把握しておくようにしましょう。
本番と同じ形式の問題を使い、時間を測って解くようにし、定期的に点数の伸びを記録すると自分の実力を測ることができて効果的です。

合格のカギを握る論点は「連結会計」

簿記1級の試験範囲の中で多くの人が苦手意識を持つのが「連結会計」です。

連結会計とは、親会社と子会社などの関係のように、支配従属関係にある企業グループをあたかもひとつの組織体であるかのようにみなして会計処理を行う会計のことです。

連結会計の問題は論点が豊富なため、1級の学習の中で最も多くの時間を割かなければならない分野でもあります。

苦手にする人が多い連結会計ですが、問題には独特の解法があり、コツを掴むことができれば得点源にすることも可能です。

参考書や専門学校ではこの独特の解法のことを「タイムテーブル」や「クイックメソッド」と読んでいます。
どちらの解法も基本的な考え方は変わりません。

連結会計の問題を仕訳で考えいるととても時間がかかりますが、これらの解法をマスターすれば答えを導くまでの時間を大幅に短縮することができます。1級は試験時間内にすべての問題を解くことが難しい場合もあるため、このどちらかの解法を習得することが合格のためには必須と言えます。

独学でこれらをマスターするためには、専門学校が出版している参考書をじっくり読み込んで理解することが必要ですが、専門学校によって解法に若干の差があるため、自分に合ったほうを選択することが重要です。
そして、一度選択したテキストはよっぽど自分に合わない場合を除き、繰り返し解いて理解するようにしましょう。安易に違うテキストに手を出すのは逆効果です。

原価計算を勉強するための最強の参考書

書店に行けば原価計算の参考書がたくさん並んでいます。しかし、簿記1級に本気で取り組むなら外せない、名著とも呼ばれる参考書があります。

それが、一橋大学名誉教授である岡本清先生が記した「原価計算」です。原価計算の世界ではバイブルとされています。

この「原価計算」という本はいわゆる一般的な受験対策本とは一線を画し、試験問題を解くための問題集という位置づけではありません。そのため、仕訳のパターンを暗記するような説明などは少なく、原価計算の本質を理解するための説明が豊富に盛り込まれています。
一見、試験問題に直結しないように思われるにもかかわらず、この本で勉強することが遠回りのように見えて実は合格への最短の方法でもあります。

この本には原価計算のすべてが書かれていると言っても過言ではなく、疑問に思ったことはほぼこの本で解決します。
本気で1級を目指す(または原価計算を得意科目にする)のであれば、持っておきたい参考書です。

原価計算は得意・不得意が分かれやすい科目ですが、一度じっくりと時間をかけて理解すれば得点源にすることが可能な科目です。
原価計算を得意科目にできれば、残りの3科目の負担が軽くなり、精神的に楽に試験を乗り切ることができます。

値段は9,000円(定価、税抜)ほどするため決して安くはありませんが、それ以上の価値のある1冊です。

スポンサーリンク
01 レクタングル (大)
01 レクタングル (大)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする