「FASS検定」とは、実務能力の測定に重点を置いた試験で、経理・財務の実務に関するスキルを客観的に測定するための検定試験です。
経済産業省の高度専門人材育成事業「経理・財務サービス・スキルスタンダード普及促進モデル事業」に基づいた試験です。
経理・財務の実務に焦点を当てた試験
経理のスキルに直結する資格と言えば簿記検定が有名です。
簿記検定は仕訳に焦点を当てたものですが、これに対し実際の経理実務においては簿記の知識以外にも様々なプロセスによって業務が成り立っていることを踏まえ、このような実務のスキルを測定するためにできたのがFASS検定です。
FASS検定試験
試験概要
FASS検定は2005年にスタートした比較的新しい試験です。
受験資格はなく、受験料さえ納めれば誰でも受験することができます。
出題形式や試験時間は以下のようになっています。コンピューターで行われる試験であることと、期間内であればいつでも受験できる点が特徴です。
出題形式 | 四答択一式、合計100問 |
受験方法 | CBT(Computer Based Testing=コンピューターでの受験) |
試験時間 | 90分 |
試験期間 | 上期(5~7月)、下期(11~1月)の受験期間中、いつでも受験可能(祝日・年末年始は除く) |
受験料 | 10,800円(税込) |
受験料は10,800円で、日商簿記検定と比較するとかなり高くなっています(日商簿記検定は1級:7,710円、2級:4,630円、3級:2,800円)。
試験は全国各地にある試験センターでコンピューターを用いて受験することになります。
各都道府県ごとに複数の試験会場が設けられています。
試験日が特定の日に決められている訳ではなく、上期・下期の受験期間中であれば随時受験できます。
出題範囲・問題
出題範囲は「経理・財務サービス・スキルスタンダード」のうち、定型業務として標準化された業務が対象とされており、以下の4分野で構成されています。
いずれも実務では重要性の高い分野であり、経理部に所属している人であれば具体的な業務がイメージできると思います。会計分野にとどまらず、税務に関する分野も試験範囲となっています。
分野 | 業務 |
資産分野 |
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決算分野 |
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税務分野 |
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資金分野 |
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試験問題の特徴として、いわゆる引っ掛け問題のようなものは出題されません。
実務で必要となる知識を知っているかどうかがストレートに問われるため、特別な試験対策は必要ありません。
合否ではなくスコアによる評価
FASS検定は、一般的な資格試験のように合格・不合格で評価する試験ではなく、スコアに応じて5段階で実務スキルを測定する試験です。TOEICなどと同じです。
レベル | スコア | 評価 |
A | ~689点 | 経理・財務分野について、業務全体を正確に理解し、自信をもって経理・財務部門の業務を遂行できるスキルをもっている。 |
B | 688点~641点 | 経理・財務分野のほとんどの業務を理解し、業務を遂行できるスキルをもっている。分野によって、知識の正確さに個人差があるものの、業務を妨げるようなことはなく、適切に対応できるスキルをもっている。 |
C | 640点~561点 | 経理・財務分野について、日常の業務を行うための基本的なスキルが身についているが、自己の経験以外の業務への対応力について差が見られる。日常の業務であれば、業務を理解して、支障なく対応できるスキルをもっている。 |
D | 560点~441点 | 分野によって、知識の正確性に差があり、不十分な部分が多いが、支援を受けながら、最低限の業務を行うスキルをもっている。 |
E | 440点~ | 経理・財務分野について、部分的にしか理解できていない。今後の努力を期待する。 |
経済産業省 経理・財務人材育成事業公式サイト より
日商簿記3級とFASSレベルCが概ね同程度のレベル・難易度と言われています。
受験者データ
2018年3月末現在、累計受験者数は53,154名です。
最高点は800点、最低点は16点、平均点は578点となっています。
累計受験者の獲得スコアに基づくレベル別の割合は以下の通りです。
最高ランクのA評価でも18.7%あり、極端に低いということはありません。
レベル | スコア | 割合 |
A | ~689点 | 18.7% |
B | 688点~641点 | 17.8% |
C | 640点~561点 | 28.9% |
D | 560点~441点 | 25.8% |
E | 440点~ | 8.8% |
知名度では圧倒的に簿記検定が上
FASS検定は知名度の点ではかなり低く、経理の実務に携わっている人でも知らない人のほうが圧倒的に多いのが現状です。
一方、簿記検定は一般的にも就職・転職に有利な資格として知られており、知名度は抜群です。
簿記検定を受験していない人は、まず簿記を勉強することをおすすめします。
そのうえで、経理実務のスキルアップや社内でのキャリアアップの方法のひとつとしてFASS検定を受けてみるのも効果的です。