「預り金」勘定を用いた年末調整の仕訳例

年末調整は、1年間の給料が確定する12月のタイミングで、正しい所得税の額を計算し、毎月の給料から源泉徴収していた所得税との差額を精算する手続きです。

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年末調整の仕訳

年末調整とカレンダー

毎月の給料から源泉徴収される所得税は、あくまで概算です。

つまり、1年間の収入を先に見積もっておき、概算で毎月の給料から天引きして徴収します。

そのため、12月になり年間の収入が確定したタイミングで正しい税額を計算してみると、先に税金を納めすぎていた、ということがよく起こります。

源泉徴収しすぎていた税金は、年末調整の手続きによって還付されることになります。

年末調整により還付金が生じた場合の仕訳を示すと、以下のようになります。

借方金額貸方金額
給料手当××預金××
(差引支給額)
預り金××
(年末調整の還付金)
預り金××
(健康保険料)
預り金××
(厚生年金保険料)
立替金××
(雇用保険料)
預り金××
(12月分の源泉所得税)
預り金××
(住民税)

この仕訳のポイントは、12月分の源泉所得税については毎月の処理と同じく貸方に「預り金」として計上しておき、それとは別に、年末調整に伴う還付金を借方に「預り金」として計上するところです。

こうすることで、毎月定型的に行っている源泉所得税の預かりの処理は12月も同じように実施できるとともに、年末調整分の仕訳と金額が混ざらないようになり、仕訳が分かりやすくなります。

還付金が預り金を超過する場合

年末調整を行って1年間の正しい所得税額を計算した結果、12月分の給料から預かる源泉所得税よりも、年末調整による還付金のほうが大きくなることがあります。

つまり、上記の仕訳の場合、貸方の預り金(12月分の源泉所得税)よりも、借方の預り金(年末調整の還付金)のほうが大きいケースです。

(借方)預り金…年末調整分  (貸方)預り金…12月源泉分

毎月の源泉所得税は、預かった月の翌月10日までに納めることになっています(納期の特例を受けている場合を除く)。

そのため、原則通り毎月納めている場合には、年末調整による還付金が12月分の源泉所得税の額を超過すると、預り金の残高がマイナスとなってしまう場合があります。

年末調整が行われた後の12月末の貸借対照表で、預り金勘定がマイナスとなる場合には、そのままにしておいてもよいですが、例えば12月末時点の決算書を作成する場合などは、マイナス残高を「立替金」などの科目に振り替えておくことも正しい会計処理となります。

預り金のマイナス残高を立替金勘定に振り替える仕訳は、次のとおりです。

借方金額貸方金額
立替金××預り金××
(マイナスとなった額)

なお、この仕訳は必ず必要というわけではありません。

また、立替金勘定ではなく、「未収入金」などの科目で計上する場合もあります。

年末調整の仕訳のまとめ

年末調整は1年に1回の作業のため、経理処理に関しても仕訳に迷ってしまうことがあります。

しかし、上記のとおり仕訳を示したように、決して複雑な勘定科目は出てきませんし、基本的には「預り金」勘定を用いて仕訳をしておけば問題ありません。

また、年末調整による還付金が12月分の源泉所得税を超過し「預り金」の残高がマイナスとなる場合の処理に関しては、マイナスのままにするか、立替金に振り替えるか、未収入金など別の科目を使用するかについて、一定のルールを決めておくと、毎年の処理をスムーズに進めることができます。

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