【簿記2級改定】税効果会計は平成30年度の試験から出題

平成30年度の試験から日商簿記検定2級の出題範囲が改訂され、税効果会計が新たに追加されています。

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税効果会計とは?

税効果会計は、「会計上の利益計算と税務上の所得計算との間で生じた一時的な差異を調整するための会計上の手続き」のことです。

言い換えると、企業会計と税務会計はそもそも目的が異なるため、それぞれ違った方法によって利益や所得を計算することから、両者のズレを調整するために必要となる手続きが税効果会計です。

■企業会計の目的 → 会社の業績(=利益)の計算

■税務会計の目的 → 公平な課税(=所得)の計算

企業会計の利益は「収益ー費用」

企業会計では最終的にいくらの利益を獲得したかどうか、つまり会社の業績を計算します。

利益は、売上高などの収益から、売上原価・販売費及び一般管理費などの費用を差し引くことにより計算します。

税務会計の所得は「益金ー損金」

税務会計では世の中の会社から公平に税金を徴収するため、税額を計算する基礎となる所得を計算します。

所得は、企業会計でいうところの利益とは異なる概念であり、益金から損金を差し引くことにより計算します。

税効果会計の必要性

企業会計と税務会計では目的が異なることから、損益計算書上の税引前利益と税金費用が対応しない結果となるため、これを対応させるための手続きが必要となります。この手続きが税効果会計です。

企業会計と税務会計のズレは一時差異と永久差異の2種類

企業会計と税務会計は目的が異なることから両者にズレが生じます。このズレは、一時差異と永久差異の2種類に分かれます。

一時差異は企業会計と税務会計のズレによりいったん発生するものの、いずれは解消する差異です。一方、永久差異はこのズレが永久に解消されることがない差異です。

税効果会計は「一時的なズレ」を調整するための会計上の手続きですので、永久に解消することのない(=一時的なズレではない)永久差異は税効果会計の対象とならず、一時差異のみが対象となります。

出題される一時差異は3つだけ

一時差異は多数ありますが、今回の改定により2級の出題範囲とされたのは、引当金・減価償却費・その他有価証券の3つだけです。これ以外の一時差異は2級では出題されません。

企業会計と税務会計のズレを3パターン(一時差異のうち、①2級で出題されるものと②2級では出題されないもの、及び、③そもそも税効果会計の対象とならない永久差異)に分けて整理したのが以下の表です。

一時差異
【2級の出題範囲】
一時差異
【2級では出題されない】
永久差異
【税効果会計の対象でない】
  • 引当金
  • 減価償却
  • その他有価証券
  • 棚卸資産評価損
  • 未払事業税
  • 圧縮積立金
  • 繰越欠損金(※)など
  • 交際費の損金不算入額
  • 寄附金の損金不算入額
  • 受取配当金の益金不算入額など

※ 繰越欠損金は一時差異ではありませんが、翌年度以降の課税所得を減額させる効果があるため、一時差異に準じるものとして、一時差異と同様に取り扱われます。

引当金

引当金には、貸倒引当金や賞与引当金、退職給付引当金などがあります。

貸倒引当金の場合、企業会計においては回収可能性が低いと見込まれる債権に対して引当金を繰り入れることがありますが、税務上は貸倒引当金の要件に該当しないため否認されるものがあります。

また、賞与引当金や退職給付引当金は会計上は適切な見積り計算に基づいて負債に計上しますが、税務上は計上が認められていません。

このように、会計上と税務上のズレが一時差異に該当します。

減価償却費

減価償却費には税務上は損金算入限度額の定めがあり、企業会計において計上した減価償却費が税務上の損金算入限度額を超える部分は損金として計上することはできません。

つまり、税務上は法定耐用年数が定められており、これを用いて計算した額までしか減価償却費として認められません。そのため、会計上この限度額を超えて減価償却費を計上した場合、その超えた分は損金不算入として加算されることになります。

引当金と同様に、会計上と税務上のズレが生じるため、一時差異に該当します。

その他有価証券

会計上はその他有価証券を時価評価し、純資産の部に「その他有価証券評価差額金」が計上されます。なお、この時価評価差額は損益計算書を通さず直接純資産の部に計上されます。

一方、税務上はその他有価証券は取得原価で評価することから、会計上の評価額と税務上の価額にズレが生じるため、これが一時差異となります。

繰延税金資産の回収可能性も範囲外

一時差異が簡易な上記3つに限定されていることに加え、繰延税金資産の回収可能性の検討も2級の試験範囲から除外されています。

繰延税金資産の計上に当たってはその資産性(回収可能性)を検討することが求められます。つまり、繰延税金資産が将来支払うべき税金を減額させる効果があるかどうかを検討して、その効果がある範囲内でしか繰延税金資産を計上できない、ということです。

実務では非常に重要な論点となりますが、2級では出題されません。

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