会計上の繰延資産の種類と会計処理

繰延資産とは、すでに対価の支払いが完了し又は支払義務が確定し、これに対応する役務の提供を受けたにもかかわらず、その効果が将来にわたって発現するものと期待される費用を言います。

会計上の繰延資産は、税務上の繰延資産とは異なり、その種類も限定されています。

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会計上の繰延資産

会計上の繰延資産は、平成18年に公表された「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」に規定されています。

その中で、会計上の繰延資産として計上できるものは、創立費・開業費・株式交付費・社債発行費・開発費の5つと定められています。

この5つが明確に定められているため、この中のいずれにも当てはまらない支出については、会計上の繰延資産として計上することができません。

それぞれの費用の概要と、具体的な内容は次のとおりです。

1.創立費

創立費とは、会社設立のための費用で、具体的には、定款や社内規則の作成費用、株式募集のための広告費、目論見書や株券の印刷費用、創立総会に関する費用などが該当します。

つまり、会社の設立登記が行われるまでにかかった費用が創立費ということになります。

次の「開業費」との違いに留意が必要です。

2.開業費

開業費とは、会社設立後から営業を開始するときまでに支出した開業準備にかかる費用で、具体的には、物件の賃借料、広告宣伝費、通信交通費、事務用消耗品費、水道光熱費などが該当します。

なお、営業開始までに支出した一切の費用がすべて開業費に該当するわけではなく、開業準備のために直接支出したものに限られます。

創立費か開業費かの違いは、かかった費用が「会社設立の前か後か」で判断する、というところがポイントです。

3.株式交付費

株式交付費とは、株式募集のための広告費、金融機関や証券会社へ支払う手数料、目論見書・株券等の印刷費用、変更登記の登録免許税などです。

株式交付費には、新株を発行する場合の費用だけでなく、自己株式を処分する場合にかかる費用も含まれます。

なお、株式の分割や株式の無償割当などにかかる費用については、企業規模の拡大のために行う資金調達という性質ではないため、繰延資産に該当しません。

4.社債発行費

社債発行費とは、社債を募集するための広告費、金融機関や証券会社へ支払う手数料、目論見書や社債券の印刷費用、社債の登記に係る登録免許税などです。

5.開発費

開発費とは、新しい技術や新経営組織の採用、資源の開発、市場の開拓のために支出した費用や、生産能率の向上を目的として設備の大幅な配置換えを行った場合の費用などが該当します。

混同しやすいものとして、「研究開発費等に係る会計基準」の対象となる研究開発費については、発生時に費用として処理することが求められていますので、留意が必要です。

なお、かつては社債発行差金(社債を割引発行した場合に生じる、額面金額と実際の発行金額との差額)も繰延資産として扱われていましたが、金融商品会計基準の導入により、社債発行差金は社債金額から直接控除する処理が定められたため、繰延資産としては扱われないこととなっています。

繰延資産の会計処理

会計上、繰延資産として計上できるものは、上記の5つに限られます。

ただし、これらの繰延資産は、あくまで例外として資産計上が許容されているに過ぎません。

原則は、いずれの支出も、支払ったときに費用として会計処理を行います。

例外的な会計処理を採用し繰延資産として資産計上を行った場合、その後の期間において償却を行います。

償却期間はそれぞれ次のように定められています。

  • 創立費 : 会社の設立の時から5年以内の、効果が発現すると見込まれる期間
  • 開業費 : 開業の時から5年以内の、効果が発現すると見込まれる期間
  • 株式交付費 : 株式交付の時から3年以内の、効果が発現すると見込まれる期間
  • 社債発行費 : 社債の償還期間にわたる利息法または定額法(ただし、新株予約権の発行費用は3年以内の定額法)
  • 開発費 : 支出の時から5年以内の、効果が発現すると見込まれる期間

償却期間は上記のように定められていますが、支出の効果が期待されなくなった繰延資産については、資産計上を継続する意義が失われますので、その時点で未償却となっている残高を一時に償却しなければなりません。

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