フリーランスとして働く場合、1年に1回、確定申告を行い、税金を納付する必要があります。
自分で税額を計算する場合はもちろん、税理士に依頼する場合であっても基本的な知識は押さえておく必要があります。
確定申告の基礎
確定申告は、フリーランスとして働く以上避けて通ることのできない、毎年恒例の一大イベントです。
確定申告には青色申告と白色申告の2種類がある
確定申告には、青色申告と白色申告という2種類の申告方法があります。「青色」「白色」という名称は、申告書の用紙の色が青か白かの違いに由来しています。
どちらの方法で申告するかは納税者の自由ですが、メリットを考えた場合、確実に「青色申告」を選択すべきです。青色申告にすることで、納税者にとって有利となる様々なメリットを受けることができます。
青色申告を選択すべき理由
青色申告制度は、納税者に正しく申告をしてもらうために創設された制度です。正しく申告するためには、1年間に生じた収入や経費を記帳するとともに、その根拠となる書類を保存しておく必要があります。
このように正しい申告をするための手間がかかることから、青色申告には白色申告にはない様々な特典が準備されています。青色申告は、白色申告に比べて、確実に節税効果が見込めます。
<青色申告の主な特典>
- 青色申告特別控除
- 青色事業専従者給与
- 少額減価償却資産の必要経費算入
- 貸倒引当金の必要経費算入
- 純損失の繰越し
青色申告の主な特典の具体的な内容
それぞれの特典の内容を以下の表にまとめました。
特典の種類 | 特典の内容 |
青色申告特別控除 | 複式簿記によりきちんと記帳し、その結果を貸借対照表と損益計算書として作成し確定申告書に添付することで、最高65万円の所得の控除を受けることができます。 |
青色事業専従者給与 | 例えば夫がフリーランスとして働き、妻もその事業に専ら従事しているような場合、一定の範囲内で妻に支払った給与の額が必要経費に算入できるというものです。 |
少額減価償却資産の必要経費算入 | 通常備品等を取得した際は数年間にわたって減価償却を行いますが、青色申告者であれば、30万円未満の備品を購入した場合に、その年に一括で経費にしてもよいという特例が適用されます。 |
貸倒引当金の必要経費算入 | 売掛金、貸付金などの残高がある場合、年末の残高に対して5.5%までの金額が経費として認められるというものです。 実際に貸倒れが発生していなくても、「残高×5.5%」までなら経費として認めてくれるため、その分課税所得を減らし税金を安くすることができます。 |
純損失の繰越し | 1年間の事業の結果、赤字になってしまうこともあると思いますが、最終的な純損失の金額を翌年以降3年間にわたって繰り越すことができます。 翌年以降に利益が出た場合は、その利益と相殺して課税所得を減らすことが可能となります。 |
このように、適正な申告のための手間を要することと引き換えに税負担の観点で多くのメリットがあります。
青色申告にするためには事前申請が必要
青色申告を選択するためには住んでいる地域の税務署に申請をする必要がありますが、決して難しいものではなく、「青色申告承認申請書」という紙1枚を提出するだけです。
国税庁のホームページからPDFでダウンロードできますので、これに記入し、税務署に持参するか郵送します。
なお、青色申告特別控除で65万円の控除を受けるためには申請書の書き方にポイントがあり、こちらの記事で解説しています。
申請には期限が定められており、遅れると青色申告にすることができなくなります。確定申告のときでは間に合いませんので注意が必要です。
<申請の期限>
- 1月15日までに業務を開始した場合 → 3月15日まで
- 1月16日以後に業務を開始した場合 → 業務を開始した日から2ヶ月以内
一度申請をすれば、基本的に翌年以降は出しなおす必要はありません。
白色申告のメリットは少なくなった
青色申告には様々な特典があるとは言え、手間をかけたくないという人もいるでしょう。
平成25年より前は確かに白色申告の場合は記帳や帳簿類の保存の点で手間がかかりませんでした。
しかし、平成26年分の申告から青色申告と同様にこれらが義務化されたため、白色申告のメリットは少なくなりました。
この点からも、もはや白色申告を選択する余地はかなり小さくなったと言えるでしょう。
青色申告を行うためには、日々の「記帳」が重要になります。
記帳とは?
記帳とは、事業の活動や取引の結果を帳簿に記録することを言います。
記帳の目的
記帳する1番の目的は、1年間にどれくらいの利益が出たのかを正確に計算することで、納めるべき正しい税額を計算することです。
<記帳する目的>
- 1年間に稼いだ利益を把握する
- 正しい税額を計算する
記帳は、昔は紙の帳簿に手書きで記入していた時代もありましたが、今では会計ソフトを使うのが一般的です。
会計ソフトを導入する
最近は便利な時代になり、会計ソフトを導入すれば簡単に記帳を行うことができるようになりました。
もちろん、昔のように紙の帳簿に手書きで記帳する方法もありますが、パソコンが普及した現代では会計ソフトを導入して入力を行っていくほうが効率的です。最近では、領収書やレシートをスマホアプリなどで画像として取り込むことで自動で仕訳の基礎データを作成してくれる便利なシステムも登場しています。
また、会計ソフトを使えば簿記の知識が乏しくてもシステムが自動で正しく処理してくれるため、結果的に申告の誤りも防ぐことが可能となります。
領収書の管理が重要
帳簿をつける基礎となるのが、取引の結果を示す帳票である「領収書」や「レシート」です。
事業としてお金を使った際は必ず領収書・レシートをもらうようにしましょう。
領収書はため込むと整理がとても大変になります。確定申告は年に1回しかありませんが、領収書の整理は少なくとも3ヶ月に1度など定期的に行ったほうがよいでしょう。
これは、税務申告のためだけでなく、日々の事業においてどれくらい利益が出ているのかを適時に把握し事業の計画を立てやすくすることで経営管理に役立つことにもつながります。