税務上の処理として「有姿除却」という取り扱いがあります。
有姿除却のメリットを活用して税負担を軽減させる方法と、損金に算入するための要件について解説します。
有姿除却とは?
有姿除却とは、会社が保有する固定資産について、実際のモノ自体は処分をしていない場合であっても除却損を計上して損金算入ができる税務上の取り扱いです。
普通、固定資産は減価償却を行い時の経過に伴って徐々に損金算入するか、もしくは、実際にモノを処分したときに除却損を計上して損金算入を行います。
そのため、実際に処分を行わないと除却損の損金算入はできないのが普通ですが、有姿除却という取り扱いを使えば、モノを処分していなくても損失を計上することができます。
有姿除却のメリット
有姿除却は、遊休資産を有している場合にメリットがあります。
遊休資産の会計処理
会計上は、遊休となっている資産であっても減価償却を行う必要があります。
これは、たとえ遊休状態になっていたとしても、時が経過すれば価値が減少していくと考えられるためです。
遊休資産の税務処理
税務上は、遊休資産の減価償却費を損金に算入することは認められていません。
そのため、会計上計上した減価償却費を、税務申告において加算しなければなりません。
有姿除却するメリット
遊休資産は、会社としては使っていない資産に係る減価償却費の分だけ費用がかかるうえに、税務上はそれが損金をして認められないため、税負担が増えてしまうことになります。
今後使用見込がないのであれば処分してしまうのが一番良いですが、処分するにも費用がかかるものも少なくありません。
そこで、実際に処分していなくても除却損を損金として認めてもらえる「有姿除却」を使うことで、税務上のメリットを享受することができます。
損金に算入するための要件
有姿除却は、実際にモノを処分することなく、現状保有している状態のままで除却処理を行う取り扱いです。
いわば、紙の上だけで(帳簿上の操作だけで)除却処理を行うということになります。
したがって、税務上損金に計上するためには要件が厳格に定められています。
有姿除却が認められる要件は、次の2点のいずれかを満たすことです。
- 現在使用しておらず、今後も事業のために使用する可能性がないと認められること
- 特定の製品を生産するための専用の金型で、その製品の生産を中止しており、今後も使用する可能性がないこと
ポイントは、「今後使用する見込みがない」ことをどのように証明するか、という点です。
「今後使用する見込みがない」とは?
有姿除却が認められるためには、今後使用する見込みがないことを第三者に対しても客観的に説明できるようにしておく必要があります。
特に、税務調査で後々指摘を受けないように十分な準備が必要です。
具体的には、社内で有姿除却に関する業務フローや内部統制を整備し、決裁書などを用いて社長等の承認を得ておく方法が考えられます。
決裁書には、なぜ使用しなくなったのかという理由や、今後使用しないという結論に至った経緯等を詳細に記載しておきます。
有姿除却を活用した節税
有姿除却は要件が厳しく定められていますが、きちんと手続きを踏んでおけば税務上は認められます。
年度末の決算にあたり税負担を減らしたいときは、社内に使用していない資産がないか調査し、今後も使用する見込みがない資産があれば、有姿除却を活用して節税につなげることができます。