所得税の確定申告には、青色申告と白色申告の2種類の方法があります。
このうち、青色申告を行うためには「複式簿記で記帳する」などのいくつかの要件を満たす必要がありますが、その分、青色申告者には様々な特典があります。その代表的なものが「青色申告特別控除」です。
令和2年分の所得税の申告から、青色申告特別控除の見直しが行われます。
青色申告特別控除の改正内容
青色申告特別控除に関して、具体的には以下の変更があります。
改正の具体的な内容
改正のポイントは、次の2点です。
- 青色申告特別控除の控除額が、これまでの65万円から55万円に引き下げられる(10万円の控除減)
- ただし、①仕訳帳と総勘定元帳について電子帳簿保存を行っている、もしくは、②確定申告書、貸借対照表、損益計算書等の提出を、期限までにe-Taxを使用して行う(電子申告で行う)、のどちらかを満たしていれば、引き続き65万円の控除を受けることが可能
上記のとおり、原則的には、青色申告特別控除が10万円少なくなる改正が行われますが、条件を満たせばこれまでと同じ額の控除を受けることができる、ということです。
その条件が、電子帳簿保存と、e-Tax(電子申告)です。
電子帳簿保存とは?
電子帳簿保存とは、法律で保存が義務付けられている帳簿書類を、紙に出力することなく、電子データのまま保存できる制度のことです。
電子帳簿保存制度の適用を受けるためには、承認申請書を税務署に提出する必要があります。
e-Tax(電子申告)とは?
e-Tax(電子申告)とは、申告書を税務署に提出する際、紙で提出するのではなく、電子データで送信する方法です。
e-Taxのやり方には、マイナンバーカード方式と、ID・パスワード方式の2種類があります。
マイナンバーカード方式の場合、申告書の送信に際して、マイナンバーカードとICカードリーダライタを用意する必要があります。
一方、ID・パスワード方式の場合、マイナンバーカードとICカードリーダライタを用意する必要がなく、税務署で発行されたIDとパスワードだけでネットから申告書を送信でき、とても便利です。
ID・パスワード方式の詳しい内容は、こちらの記事で解説しています。
65万円の控除を受けられるかどうかのチェック
令和2年から控除額が減ってしまう改正がありますが、条件を満たして引き続き65万円の控除を受けることができるかどうか、下記の質問に沿って確認できます。
1番から順に、YesまたはNoで回答してみてください。
- e-Taxで申告している:Yesなら2へ、Noなら3へ
- e-Taxで決算書を提出している:Yesなら65万円控除可能、Noなら3へ
- 記帳は会計ソフトを利用している:Yesなら4へ、Noなら不可
- その会計ソフトが電子帳簿保存に対応している:Yesなら5へ、Noなら不可
- 電子帳簿保存の承認申請書を税務署に提出している:Yesなら65万円控除可能、Noなら不可
上記のチェックの結果、「65万円控除可能」にたどり着いた場合は、令和2年以降も、これまでと変わらずに65万円の控除を受けることができます。
一方、「不可」にたどり着いた場合、このままだと控除額が10万円減って、55万円となってしまいます。
基礎控除の改正が同時に行われる
ここまでは、青色申告特別控除の改正でしたが、基礎控除についても同時に改正が行われます。
基礎控除の改正の内容は、以下のとおりです。
- 基礎控除額が、これまでの38万円から48万円に引き上げられる(10万円の控除増)
令和2年分の申告から、青色申告特別控除は10万円の控除減となる一方、基礎控除については10万円の控除増となります。控除が増えるということは、減税になることを意味します。
したがって、個人事業主で確定申告を紙で提出している場合(電子申告を行っていない場合)、控除の増と減が相殺された結果プラスマイナスゼロとなり、結局のところ、改正による影響はありません。
改正によって影響を受ける人
今回の改正により、条件を満たせばプラスの恩恵を受けることができます。
すなわち、継続して65万円の青色申告特別控除を受けるための要件(電子申告を行うか、電子帳簿保存を行う)を満たすことにより、基礎控除の増額分だけ、メリットを受けることができます。
10万円控除が増えるということは、その分だけ所得を減らす効果があります。つまり、減税になるということです。
したがって、所得税・住民税の負担が減ることはもちろん、健康保険などの各種社会保険料の負担も軽くなる場合があります。
青色申告特別控除と基礎控除の改正内容をまとめると、次の表のようになります。
これまで | 令和2年分から(紙で申告) | 令和2年分から(電子申告か電子帳簿保存) | |
青色申告特別控除 | 65万円 | 55万円 | 65万円 |
基礎控除 | 38万円 | 48万円 | 48万円 |
合計 | 103万円 | 103万円 | 113万円 |
青色申告特別控除の改正のまとめ
令和2年分の所得税の確定申告から、青色申告特別控除の改正が行われます。
同時に基礎控除の改正が行われることもを考慮し、電子申告を行うか、電子帳簿保存を行って、10万円の控除「増」のメリットを受けられるよう準備を進めましょう。