交際費と広告宣伝費は、しばしば内容が似通っていることがあり、どちらで会計処理するか迷うことがあります。
税務上、広告宣伝費は損金算入できるのに対し、交際費は損金算入に制限(限度額)があります。
そのため、税負担を軽くするためにはなるべく広告宣伝費として処理したいところですが、まずは両者の違いをよく理解して、正しい処理を行うことが重要です。
交際費と広告宣伝費の違い
交際費と広告宣伝費の定義は次の通りです。
交際費とは
交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下「接待等」といいます。)のために支出する費用をいいます。
出典:国税庁ホームページ 交際費等の範囲と損金不算入額の計算
広告宣伝費とは
不特定多数の者に対する宣伝的効果を意図するもの
交際費と広告宣伝費との区分
交際費と広告宣伝費は似ているようですが、両者を区分するポイントは次の通りです。
不特定多数の者に対する支出か否か
例えば、一般の消費者に対して旅行や観劇等の招待を行った場合の費用は交際費ではなく広告宣伝費となります。
一方、得意先や仕入先など特定の者に対し旅行・観劇等の招待を行った場合は、交際費と認定されることになります。
節税につなげるポイントと具体例
税金を減らすためには、なるべく損金に算入できる費用として処理したほうが有利となります。
そのため、これまで交際費として処理してきたものの中に、広告宣伝費として処理できるものがないかどうか見直してみることで、節税につながる可能性があります。
交際費と広告宣伝費の違い<具体例>
交際費に含まれず、広告宣伝費として処理できる支出には次のようなものがあります。
- カレンダー、手帳、扇子、手ぬぐいなどを贈与するために通常要する費用(少額な物品)
- メーカーや卸業者が一般消費者に抽選で旅行に招待する費用
- 化粧品メーカーが無料お試しセットを配布する費用
- ビールメーカーが新商品開発に当たり、発売前に一般消費者にモニターを依頼した際に謝礼として支払う金品
- 自動車販売会社が、一定金額以上の車を購入した消費者全員を旅行に招待するキャンペーンを行った際の旅行費用
- 工場見学に来た一般消費者等に、自社製品の試飲、試食をさせる費用
つまり、一般消費者とは商品の中間消費者ではなく、最終消費者(利用者)のことを指します。
間違えやすいもの
交際費なのか広告宣伝費なのかの区分に関して、過去に裁判で争われたものなど、間違えやすい支出として次のようなものがあります。
- 野球場のシーズン予約席は、契約した会社の社名が書かれているため広告宣伝費ではないか、とも思われますが、通常は小型で入場者の目安のために記載されているにすぎないため広告宣伝効果はないと考えられることから、入場チケットを取引先に贈答するために支出した費用は交際費となります。
- 店舗の開店祝いとして贈呈した花輪に、その店舗の工事を施工した会社名が入っていることから広告宣伝費ではないかが争われた事例がありますが、花輪の贈呈先がその店舗に限られており、花輪に社名が掲げられていたとしてもそれが不特定多数の者に対する宣伝効果を目的としたものではないため、このような花輪の購入費用は交際費に該当します。