相続税の基礎:計算方法、基礎控除、税率、税額控除

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相続税とは

相続税の計算方法と相続財産

相続税は、相続や遺贈によって取得した財産などに対して課税される税金です。

相続税の申告及び納税期限は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内と定められています。申告書の提出先は、相続人が住んでいる場所を所轄する税務署ではなく、原則は被相続人が亡くなったときの住所地を所轄する税務署です。

相続税がかからない範囲

相続した場合に必ず相続税がかかる、というわけではありません。

遺産額が少額(基礎控除額以下)である場合は、相続税はかかりません。

基礎控除額は、次の計算式で求めます。

基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

この計算式を見てわかる通り、最低額は3,000万円です。したがって、相続する財産が3,000万円以下の場合、法定相続人の人数等にかかわらず、相続税の納税・申告の必要はありません。

財産の額が3,000万円を超える場合は法定相続人の数に応じて基礎控除額を計算し、これを超える財産を相続した場合は、納税・申告の必要が生じます。

例えば、法定相続人が2人(妻と子1人)の場合、基礎控除額は以下の額になります。

3,000万+600万×2人=4,200万円

つまり、このケースでは遺産額(正味の遺産額)が4,200万円以下であれば、相続税が課されないことになります。

<平成26年以前>

 

平成27年1月1日以後に相続や遺贈により取得する財産に係る相続税から、上記の計算式で求めた額が基礎控除額となっています。

これ以前は、【5,000万円+1,000万円×法定相続人の数】でしたので、申告が必要となる人の割合は以前と比べて高くなりました。

法定相続人とは

まず、法定相続人になれるのは「配偶者と血族」です。

そして、配偶者は必ず法定相続人です。婚姻期間の長短は関係ありません。

なお、いわゆる事実婚や内縁関係など、戸籍上の配偶者となっていない場合には法定相続人になれませんし、離婚をした場合の元夫・元妻も相続人になれません。

次に、配偶者以外の法定相続人には、次のような優先順位があります。

  • 第1順位:子供(何人かいれば、それぞれ相続人となります)
  • 第2順位:父母
  • 第3順位:兄弟姉妹

第2順位は第1順位が該当ない場合(つまり子供がいない場合)にしか生じず、第3順位も同様に第1、第2順位が該当ない場合にしか生じません。

代襲相続(だいしゅうそうぞく)

法定相続人である子供が孫を遺して死亡していた場合、その子供の代わりに孫が相続することができることになっており、これを代襲相続と言います。

子供の代襲相続は孫、孫が被相続人より先に亡くなっている場合はひ孫、というイメージで、相続する権利が順番に下がっていきます。

兄弟姉妹が亡くなっている場合には、兄弟姉妹の子(被相続人の甥姪)が代襲相続として権利を引き継ぐことになります。

子供と兄弟姉妹の代襲相続の違いは、子供の場合は直系のラインで順番に何代にもわたって権利が移っていくのに対し、兄弟姉妹の場合は兄弟姉妹の子供まで、つまり被相続人から見て甥姪までしか権利が移らない、という違いがあります。

正味の遺産額の計算方法

正味の遺産額は、「プラスの財産(資産)」-「マイナスの財産(負債)」で計算します。

つまり、土地・建物や現金預金・株式、生命保険金等の財産から借入金等の債務を引いたものが正味の遺産額となります。

この場合の「財産」には上記のほか、車、宝石、美術品、書画骨董、死亡退職金、貸付金、特許権、著作権など、金額を見積もることができる経済的価値のあるすべてのものが含まれます。

なお、以下のものは、相続財産の額から除くことができます。

  • 墓、仏壇、その他神を祭る道具などで日常礼拝に使っているもの
  • 葬儀費用、香典
  • 死亡保険金のうち、「500万円×法定相続人の数」で計算した額
  • 死亡退職手当金等のうち、「500万円×法定相続人の数」で計算した額

課税遺産総額

正味の遺産額から基礎控除額を引いたものが「課税遺産総額」です。

これが相続税率をかけるための課税ベースとなります。

相続税の税額

税額の計算は、各人が相続などで実際に取得した財産に直接税率を乗じるという方法ではなく、正味の遺産額から基礎控除額を差し引いた残りの額(課税遺産総額)を民法に定める相続分により按分した額に税率を乗じて計算します。

つまり、いったん課税遺産総額を法定相続人の数で分割したものと想定し、分割した財産ごとに税率をかけた税額を算出し、それを合計することで相続税の総額を計算します。

下記の表が速算表です。この速算表で計算した法定相続人それぞれの税額をまず計算し、それらを合計したものが相続税の総額となります。

なお、各人の納める相続税額は、相続税総額を各法定相続人の課税価格に応じて再度分配した金額となります。

課税価格 税率(%) 控除額
1,000万円以下 10% なし
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

日本の場合、最高税率は55%で、世界的にみて高いといわれています。

海外では、フランスで45%、アメリカやイギリスは40%、ドイツは30%ですし、そもそも相続税が存在しない国もあります。

<平成26年以前>

 

平成26年以前は最高税率が50%でしたので、改正により上限となる税率が5%引き上げられました。

税額控除

各人の相続税を上記の方法で計算したあと、それぞれの税額から税額控除を行って最終的に税務署に納付する金額が決まります。

主なものとして、配偶者が相続した財産のうち法定相続相当額または1億6,000万円までの額を控除できる配偶者の税額軽減があります。

よく、「配偶者は相続税がかからない」と言われることがありますが、これは上記軽減制度があるためです。

この軽減制度には、法定相続分以内であれば金額に上限はありませんので、遺産がどれだけ多額であっても法定相続分までの額を相続していれば課税されません。

相続税の納付

相続税の納税については、基本的には期限内に金銭で一括納付を行います。

ただし、相続内容によっては納税額が多額に上ることがあるため、手元資金が少ないという理由や、相続財産に不動産が多く簡単には売れないなどの理由で一括で払えない場合も想定されます。

そのような場合には、特別な納税方法として、「延納」と「物納」の制度があります。延納とはいわゆる分割納付のことで、物納とは相続した有価証券や不動産などの現物で納付することを指します。

これらの方法はあくまで金銭での一括納付ができないときに認められるものですので、例えば預貯金が多額にあるような場合や、納税者自身に支払えるだけの収入がある場合には認められません。

延納・物納が認められるハードルは高いため、計画的に納税資金を準備しておくことが重要となります。

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